燃え盛る炎・・・
ユラユラと、単調ながらも時折見せる恐怖を覚えるほどの火柱が、なぜか美しい・・・
まるで、魂でも宿ったかのように右へ左へ揺らめいている。
俺は、その炎に見とれて微動だにしなかった。
イヤ
動けなかったのだ。
「陽介!!」
いきなり、女性の叫び声が響き渡った。
『あぁ・・千尋かぁ・・』
そう心の中で思ったが言葉にならなかった。
『陽介? そうだ、俺の名前かぁ・・ 俺は、藤原陽介、年は今年23歳になる、仕事はフリーター ・・まあ、好きなときに働いてるって感じかぁ。
千尋は・・ 神木千尋 千尋は、付き合って、まだ二ヶ月半の新しい彼女だ・・・ まだ、二ヶ月半だが初めて本気で、結婚したいと思った相手だ、一番大切な存在・・・』
燃え盛る炎が、わっと我に返した。
俺は、今何を考えてたんだ!?
大体・・・ ここは何処なんだよ??
いきなり、不安がどっと押し寄せてきた。
よく、見ると炎の後ろに建物が見える。
古い・・・ 洋館・・?
建物までは、やや距離があるのでそれぐらいしかわからない・・。
ただ、その洋館がいまは燃え盛る炎に包まれている・・・。
悲しげに、しかし誇らしく、優雅に・・。
俺は、建物を凝視していた。 すると、いきなり洋館の陰から女性の姿が現れた!
俺は、呆気にとられた。
直後に、全身に寒気が走った。 怖い・・。
恐らく、この人生で始めてであるだろう程の恐怖に打ちのめされた。
かすかに、姿が確からめれるほどの距離のはずなのに、なぜかその顔は確かにこちらに向けられていて、殺意のこもった眼差しでこちらを睨んでいる。
すると、いきなり彼女の口が動き出した。
しかし、この距離では聞こえるはずがない。
大体なぜ俺は、口が動き出したことが分かったんだ!?
この距離では、声は愚か顔もまともに見えない。
だが、俺には確信があった。 なぜかは、わからない。 でも、なにかを呟いている。
『ヨ‥ウ‥ 陽‥介‥』
わぁ!!
イキナリ頭の中で、響き渡るような、物凄い声がした。 そ、そんなバカな!!ここまで声が届くはずがない!! しかし、耳にドロドロと纏わりついて声がとれない。 なのに、ところどころ途切れていて内容が聞き取れない。
「陽介!!」
今度は千尋の声だ、その瞬間建物は大きな音をたてて爆発した‥。