間もなくして課長は私にしつこく言い寄ってきた。
「沢田くん、キミももう立派な社会人なんだから、今日の夜、どうだい?」
「どうって…」
課長はお酒の力で私と寝るつもりだろう。もう当分男の人とは…。
「食事でも」
「ごっ、ごめんなさい!まだ、社内の掃除が全然終わってなくて…夜までかかっちゃうかなぁ〜!」
ゴ…ン
非常扉に軽く押しつけられた。
「誰のおかげで入社出来たと思ってんだ?」
「すみません…でも、ダメです」
「食事するだけなのに?」
「ごめんなさい…」
私は恐ろしくなって走って逃げようとした。
「あいつか!?相沢が好きなのか!?」
「!!違い………違います!」
小林課長は私を一睨みして行ってしまった。
「ただいま〜」
「お帰り……うぅ…寒い」
「大丈夫ですか?この暑い時期に寒いだなんて」
相沢さんは風邪をひいていた。
結構重症の熱風邪だ。
「うつしたらごめん……熱ぃ…」
暑がったり寒がったり、忙しい風邪である。
「熱計りましょうか」
「いいよ、疲れてるだろ」
「なんか食べれます?」
「いや、今はやめとく」
「相沢さんてなんで人の好意無視するんですか?」
「無視してないだろ?…寒ぃ」
「…………あっためてあげよっか?」
「寒い〜〜!……熱いか…熱いなぁ…」
「聞いてないんですか?」
「なにが…?熱っ」
私は一晩中熱い寒いと言っていた相沢さんを無視して寝てしまった。