『やめて、やめてえぇぇぇっ!イヤァァッ、助けて、九重さん!!!』
大勢に揉みくちゃにされながら猛然と首をふる一条フサエの泣き声は―\r
皮肉な事に演技ではなかった。
だが、その九重モエも特別調査取締班に厳しくマークされ、霧島ユウタも立ち上がれないままだ。
今度は中年の女性が、チェーンソーを手に取った!
『アツコの仇いぃぃぃぃぃぃ!!!』
キュィィィィィィィン
シャァァァ ガリガリガリツ!!
『ひぎゃあぁぁぁぁぁ!!!』
今度は知っていた分、恐怖は二倍だ。
容赦なく切断された左腕が宙を舞い、鮮血がその後に続いた―\r
一条フサエは、そのまま歩道に投げ落とされ、それに更なる責め苦を与えるべく、群がった遺族達で、彼女の声も姿もかき消されてしまった―\r
そこへ、誰かが通報したのだろう。
パトカー2台がロータリーにやって来て、中から警官達が降りてきたが―\r
『ああ、ご苦労様です―ご心配なく、あれは我が校の【処刑】ですよ。何、もうすぐ終ります』
梅城ケンヤは警官達に素早く駆け付け、手際良く言いくるめ出した!
『嘘よ…嘘よ!!!』
特別調査取締班の人垣の間から、九重モエは叫んだが、集まり始めた見物人達のざわめきと通過する急行電車が、正しい指摘を呑み込んだ。
『―だけど、今誰かを襲ってるの、あれは大人だよね?』
『あれは【生徒会関係者】です。私の命令で動いています―責任は私達が取りますからどうぞご心配なく』
『あ、そう』
警官はあっさりと了承した。
『じゃ、念のため、これに署名しといて』
相手は電子ボードを取り出した。
一般市民や公共施設に被害を出さない旨の、誓約書だ。
さっさとそれに応じたケンヤに
『分かってるだろうけどさ―まあ、周囲に迷惑をかけない様に―今の所部外者が傷付いていないみたいだから私達はこれで帰るけど、【学校内司法自治全権委任法】の枠ははみ出ない様に―』
そして、警察はさっさと帰ってしまった。
凶悪犯罪の増加と予算と人員の減少がたたって、彼らも正直生徒同士の争いに関与する余裕などなくなっていたのだ。
これで、もう一条フサエを助けれる者はいなくなった。