『そうだ、こいつの腹ってどうなってんのかな?さぞかしどす黒いはらわたで満たされてんだろうなあ』
そう言って誰かがチェーンソーを持ち―\r
その先をはだけられた一条フサエの臍に押し付け、起動させた!
ガガッ ガガガッ
チュイィィィィィィン
ブババババババババッ ブババッ
ブババッ ゴバァァァァァッ
ゴボゴボゴボボッ!
ミキサーが果物を砕く粘っこい音が辺りに響き―\r
チェーンソーは事実、内臓までかきまわしずたずたに切り砕きまくった!!
切り開かれたフサエの腹からは、皮下脂肪やら腸の断片やらが回転刃に掻き出され、歩道1面を白にピンクに化粧する。
男がチェーンソーを止め、腹の中から出すと、切れ切れになった内臓が、ゆっくりと押し出されて、路上に達した。
糞尿に酷似した臭気が漂う中、男はチェーンソーを乱暴に棄てた。
『ふん、案外普通じゃないか。自己愛過剰な奴だからこそ、却っててめえの体は大事にする物なのかな?ああ、それとも真っ黒なのは脳みそだったか』
もう、一条フサエに息は無かろう。
また、ここで病院に搬送しても、助かる見込みはない。
だが―\r
『油断しちゃ駄目よ!!確実に死なせなきゃ』
一人の女性が再びチェーンソーを起動させ―\r
『このぉぉっ あくまがぁぁぁぁっ!!!!』
チュィィィィィィィン
ジュバァ ガガガガガガ
ぼとり
一条フサエの首が斬り落とされた―\r
『い―いやああああああアアァァァァァァッ!!!!!!』
一条フサエの死体を巡って、遺族同士の奪い合いが始まる中、歩道に両手を突いて九重モエの泣き叫ぶ声が虚しく響く。
周囲に集まった見物人達は、ただ面白そうにそれを眺め、携帯に撮り、飽きたものは足早に帰るのみ。
どうやらテレビ局も来たらしいが、彼らが真相を知る事はないだろう―\r
やった―\r
俺は勝ったんだ―\r
ナツの仇を取ったんだ―\r
梅城ケンヤの頬に、一筋の涙が流れた。
―だが
―なんだこの虚しさは?
―この哀しみは?憐れみは?
―悪いのは一条フサエじゃないか
―だから正義の裁きを下したんじゃないか
それなのに―\r