黒の心は光を見つめる

アレイシア  2007-09-16投稿
閲覧数[272] 良い投票[0] 悪い投票[0]

空は晴天。雲一つ無く暖かな陽気。こんな日はひなたでゆっくりとうたた寝でもしていたいのだが、したくてもできない一人の少女がいた。
「ど、どうしよう……。」
彼女の前に広がるのは見渡す限りの生い茂る森。そう、彼女は現在目下全力で迷子だった。その怯え切った表情は天敵を前にした子リスを思わせるほど挙動不信で、少し可愛かったりする。
「ええと…こっちから来たから、村はこっちかな……?」
ビクビクしながら彼女はゆっくりと草木を分けて進んでいく。宛の無い彼女の歩みはとてもたどたどしかった。
すると、彼女の背後からガサガサッという音がした。
「ひゃあ!」
彼女が飛び跳ねるように後ろを振り向くと、小さな茂みが蠢いていた。
「な、何?」
じっと茂み見つめていると、ガサガサッと再び茂みが蠢いた。ビクッとする彼女の脳裏に巨大な熊が自分に襲いかかって来る映像がよぎった。
「ど、どど、どうしよう…食べられちゃうよ……。」
全くの被害妄想である。それにしてもどれだけリアルに想像したのだろう。すでに半泣きである。彼女が涙を拭き、逃げなければ、と気付いたその時、ガサッ!と黒い影が飛び出した。
「ひゃ!!…人……?」
逃げ遅れた彼女の目の前に現れたのは、異様な姿をした一人の青年だった。ボロボロに汚れ、ところどころ千切れてる上着に太腿まで露出した短パンを着ており、間違っても山に入るような服装ではない。彼は彼女を見ると、目を見開いた。
「あ、あの…。」
彼女がそう声をかけた時、強い突風が吹いた。
「きゃあ!」
突然の吹き飛ばされそうなほどの風に思わず目を瞑った。彼女が再び目を開く頃には、目の前の青年は姿を消していた。
「喋るな。叫べば殺す。」
「え…?」
耳元から鋭い声が聞こえる。と同時に、彼女は首に違和感を感じた。それがナイフだとわかるのにそう時間はかからなかった。
「ひっ…!」
彼女は恐怖で震えていた。殺されるかもしれない、と思うと声も出すことができず、泣き声を抑えるので精一杯だった。
少しの間その状態が続くと、彼ははっきりと彼女にこう言った。
「頼みがある。」



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 アレイシア 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ