二月十四日。 今日はバレンタインデーだ。まあ、今の僕には関係の無い事だが…。 「世間ではカップルが楽しそうにデートでもしてるんだろうな」と、思いながらいつものように、今日もぼーっとしていた。 今日は、この冬で一番ではないかと思うほど寒く、暖房も無いこの部屋で一人で過ごすには、少しさみしかった…。 普通こんな日は、彼女との甘い思い出に浸ってしまうんだろうが、なぜか幼なじみの「涼太」の事を思い浮かべていた。 涼太とは、古い付き合いだったので当然仲も良く、俗に言う、
「なんでも話せる親友」 だった。 涼太は背が低く、髪の毛がいつももじゃもじゃで、お世辞にもかっこいいと言える男ではなかったが、おしゃべりで明るく、おもしろい良いヤツだった。
当然女性とは無縁で、クリスマスやバレンタインなどのイベントは、いつも一緒にいた事を覚えている。 そんな涼太とは、ダイヤのようなかたい絆で結ばれていると思っていたが、ある日それが実はただのガラス玉だったということに気付いた…。 僕はあの頃、どこの世界にでもよくいる不良グループに目を付けられていた。服を破られたり、殴られたりは日常茶飯事だった。だが普段のいじめは耐えられた。ある光景を見るまでは…。 ある日、いつもどおり不良グループに絡まれていたが、奇妙な光景が目に入った。その不良グループの中に涼太がいたのだ。 僕は勝手に、助けてくれるものだとばかり思っていた。だが、気付くと不良グループにまざり僕に暴行を加えていた。その瞬間、僕の中で何かが割れ、崩れていくのがわかった。 後で理由を聞いたが、涼太は何も答えてはくれなかった…。 それを最後に涼太は遠くへ旅立った。もう、僕の所へは戻ってはこないだろう。「涼太、今おまえはどんな夢を見ているんだ?」 気付くと僕は、天井を見上げていた。 「僕は何の為に生きいるんだろう」 つづく…