報われない恋だっていうことは、解ってます。
あの人は、私のこと仲間としてしか見てないから。
今までも、これからも…。
でもあの人の近くで仲間としていられるだけで私は幸せです。
…でもね、でもね一つだけ、私にわがままをさせて下さい。
私は…あなたを…
―頬が冷たいと思ったらどうやら雨が降っていたようだ。ぽつり、ぽつりと空から雫が落ちる。
そっと頬にふれてみると気付かぬうちに泣いていた様で涙が一すじの線となり頬を伝っていた。
私は袖口でゴシゴシと顔をぬぐう。頬を一回叩いて気合いを入れると、屋上を後にした。
仕事に戻る途中に自販機を見つけ、少し寄り道をする。
そうして帰っている途中、廊下でバッタリと葵ちゃんに出くわした。
「てめぇ、どこで仕事サボってやがった」
悪態をつく葵ちゃんを無視し、私は缶を無言で差し出す。
「あん?どうも……ってまた紅茶かよ!何?お前、嫌がらせか?俺に対する」
―嫌がらせ?あまいな、葵ちゃん。
紅茶もね、ピザまんもね、私の大好きなものなんだよ。
少しでもね、好きな人に好きになってほしいじゃない。
私はあなたの近くで仲間としていられるだけで幸せです。
…でもね、でもね一つだけ私にわがままをさせてください。
私は…あなたを
少しだけでもいいから私色に染めたいんです。
「染色中」
完