紀美はしっかり私を見据えて言った。
「私は気付いてた。由良が健太を見てるとき切なそうに…幸せそうにみてたこと。」
紀美の言葉に驚いた。だって私はあの頃、好きだってことに自覚してなかった。
だけど紀美は私のことなのに私より先に気付いた。私が『健太を好き』なことに…。
紀美は私より先に『健太を好き』なことに…。
そして私は紀美が『健太を好き』なことに気付いたのはだいぶ後だったことに…。
「だから由良相手にまっこうから勝てない…って思ったから。
だから…あの時謝れなかった。」
紀美はそう言ってる途中に涙が流れていた。それでも紀美は話すのを止めずこう続けた。
「昨日、健太に告白…して…フ…ラ…れ…た……。」
紀美は涙をこらえられず、泣いた。
涙で震える声。それでも必死にこう言った。
「だから…由良とも…ちゃんと…あの時の…ケジメ…つけた…かった。ずっと…本当は…謝り…たくて…後ろめ…たくて…。あの時はゴメン!」
紀美は最初よりも深く頭を下げた。
私もこらえてた涙が流れだした。
涙で声が震えながら、それでも私は言った。
「紀美の…気持ちは…分かった。
紀美も…ずっと…引きずってた…こと…。辛かった…こと。
だから、このことにはもう触れへん!」
私は紀美の目をしっかり見つめ、こう続けて言った。
「ただし、私は紀美よりも辛いめにあった。このことだけは、忘れられへん。
だから…このことを紀美も忘れんといて!」
この時、私はまた必死に涙をこらえて紀美にそう言った。
紀美は「分かった。絶対に忘れない!」
紀美もまた、この時涙をこらえてそう言った。