俺は、とても幸福な気分だった。
空から降る雪も綺麗に見える。
今まで何度も通ってる道なのに、今は、知らない場所に来た時の様な新鮮な感じがする。
気分が違うと言うだけで、すべてが、新鮮だ。
俺は、親父、かぁちゃん。そして、サトシに早く伝えたく、家路を急いだ。
家に向かう途中、渋滞に捕まってしまう。
『なんで、この道で渋滞なんだよ!』
俺はこの渋滞に苛立ちを覚えた。
30分ぐらい渋滞に、停められ。ようやく裏道に抜けれるところまで、車が進んだ。
俺は、車の時計を確認し、家路を急ぐ。
『もう9時かぁ。あいつ怒ってるだろうなぁ』
ようやく家に着き、サトシの車を探す。
『なんだよ。あいつまだ来てないじゃん。』少しホッとした。
家に入ると、かぁちゃんが泣きながら、フラフラと俺に近づいてくる。
「なんだよ!どうしたんだよ!」
俺は、玄関から、居間に向かった。親父もうなだれている。
「どうした?何?」
親父はゆっくりした口調で。
「サトシが…」
「はっきり話せよ!」
玄関からは、かぁちゃんの泣く声。
「サトシが事故で…」
俺は、さっきの渋滞の意味が分かった。
何を考えていたのか、自分の足が、しっかり地面に着いているのかも分からない。ただ玄関を抜け、息が上がり、足も、胸も、脇腹も痛い筈なのに、ただがむしゃらに走った。
渋滞の先頭まで来た時、俺の目に写ったのは、大型トラックの下敷きになるように、黒い車みたいな物が挟まっていた。
辺りには、ガラスが飛び散り。サトシの助手席に座っていた筈の、熊のぬいぐるみが、転がっていた。
「事故だって…」
「トラックの信号無視らしいよ…」
「あの下敷きの車の運転手即死だってよ…」
野次馬どもが、好き勝手に話をしている。
俺には、意味がわからなかった。今の状況。野次馬どもの会話。