あの日は 今日のような雨だったな…
母さんと私は 父の暴力から逃げ出した。
母は 部屋に隠れていた私を 連れて裏の山を超え 街に向うつもり。
父は 酒を飲みながらテレビを見て私たちの逃げる様子は 気付かないみたい。母さんは 早く私と逃げたかったのね?サンダルをはき 走り出した。
山道は 雨のせいで滑るし すごく寒かった。母さんは それでも私を助けたかったのね?走った。話なんかしない 腕をつかんで必死だったの。
しばらくしたら 街を見晴らせる山頂近くの崖にいた。
「母さん 私たちあそこで暮らすのね」ってきいたら 「…父さん 待ってるから」と。
信じるって 私には難しかったけど 母さんは 父さんとの幸せを信じていたのね。
あの日から 私はずっと ここにいる。誰にも気付かれず 崖の下にいる。
私も 母さんのように 信じてる。
だれかに見つけて貰えることを 信じている。
あれから 何度目の雨だろう。もう 私を誰かが見つけても 私が女だか男だかもわからないんだろうな…。
それでも 私は信じてます…。