遠い昔に【約束】したはずであった。
『……父さん…母さん…本当に行っちゃうの?』
今にも泣き出しそうな声で小さな赤毛の男の子が尋ねる。
『大丈夫よ、シバ。【使命】を果たしたら必ず…あなたを迎えに来るから…それまで待っててくれるわよね?』
そう言って母親はシバの頭を撫でた。
『約束…約束だよ?ボク待ってるから…!』
両親に駆け寄り、二人の小指に自分の小さな小指を絡ませる。
『…母さん、時間だ。』
『ええ。それじゃあね…シバ…』
言葉を切ると二人は一瞬にしてその場から消え去った。
両親がいた場所を呆然とシバは見つめる。
不意に後ろから誰かに抱き寄せられた。
『さぁ…シバちゃん?お父さんとお母さんがいないあいだ、私たちがあなたの面倒を見るから。』
と、若い女性の声。
『そうだ!今日はシバくんのためにご馳走を用意してるから早く帰らなきゃな!』
それに続いて今度は若い男の声だった。
『う、うん…!ありがとう!おじさん、おばさん!!』
シバは両親と交わした約束を果たされることを信じ、この若い夫婦の子供となった。
そして、【約束】が果たされぬまま【12年】の時が流れた。
なんの不自由もなく育ったシバは【17】になった。
屈強で熱血漢な青年へと成長していた。
そして、この世は【人間界】と【魔界】に区別されし世界。
シバは二つの世界の狭間【ヴァルファイム】
という小さな町で育った。
今日もヴァルファイムの町で何かが起ころうとしていた。
−そして、この物語はシバが一人の少女に出会ったことから始まる−。
−続。