今の私はとても気分がいい。
いつものように召し使いが入れるダージリンティーの味も、今日は一段と風味が増しているようだった。
天気予報は午後から雨だと特注品の68インチ液晶画面の奥から伝えてくるが、そんなことは今の私にとってどうでもよくなっている。
朝食のサンドイッチやスクランブルエッグ、サラダはもちろんのこと、いつも残すハムでさえプレートの上で踊っているかの様だった。
「お嬢様、御車のご用意が出来ました」
その一言で、浮かれていた自分からいつもの自分に意識をすり替えようと努めた。
「いつもありがとうね」
普段そんな事を口にするなんて有り得ないことだ。
私は自分でも有頂天になっている事に気がついていた。
それもそのはず、何て言ったって今日はあの望(のぞむ)様とのデート。
ご理解頂けていないようなので説明するけど望様は、神宮寺(じんぐうじ)家の御長男であり、神宮寺カンパニーの次期社長兼取締役として父親である新蔵(しんぞう)様の後継ぎを任されているお方。
私の通う壽学園(ことぶきがくえん)で人気No.1の超エリート高校生。
スタイルがよく成績優秀、運動神経抜群。
更にあのルックスとくるんだから……。
そんな望様からデートのお誘いがあったのは2日前のこと。
突然のことで困惑したけれど、勿論返事はOK。
断る理由がないもの。
そして今日がそのデート当日。
そんなこんなでこのテンション。
一体どんなサプライズが待っているか。考えただけでも興奮が止まらないのだ。
優雅にリムジンに乗り込み、約束の場所へと車を向かわせる。
前と後ろにはガードマンが乗っている車がガッチリと警備体制を崩す事なく廻りを固めていた。
少し一段落したので、私の自己紹介とすることにしようと思う。
私の名前は右京 光(うきょう ひかり)。高校二年生であり、世界を相手に輸入・輸出を主な収入としている右京グループの次女。
勿論、私には香(かおり)というお姉様がおり、次期後継ぎとしての事業展開を日々学んでいる。
言い忘れてたけど望様と私は同じクラスでホームルーム委員を勤める仲で、毎日を楽しんでいるのだ。