一方、右京家の厳しい訓練を経て来た猛者とも言えるガードマンは二人を光の警備に当たらせている間、残りは車内でかわいらしくサンドイッチを口にしていた。
戦士の休息といったところであろう。
たいていが外国人であるが、そのなかに一人だけ日本人である通称Jがいた。
全てのガードマンはお互いを通称名でしか呼ばない。
また、他の同職者の情報も持っていないのだ。
当たり前だが、そんな中で世間話をする者もおらず、ただ任務についての確認を取るに留まっていた。
通称Jの名前の由来は日本人(Japanese)だからにほかならない。
以外と適当だったりする。
そのJと白人の通称Pは黙々とサンドイッチを手に取っては一口で頬張っている。
光様の護衛という任務に失敗は許されない。
緊張をいつも保つことが重要であることは、耳が腐る程教官に叩き込まれた。
サングラス越しに見る景色にはいつも気を配り、万が一に備えている。
その万が一が起こる事を、この時誰も予想だにしなかったであろう。
憧れの望様の近くにいられるなんて素敵じゃない!
このまま時が止まればいいのに……。
そんな風に考えているのんきな光をしりめに望はやけに時計を気にしていた。
左腕には立派な金の細工が施されている時計が輝いている。
「ごめん! ちょっとトイレに行ってくる」
「大丈夫、気にしないでね」
独りになりたくないのはやまやまだが、こんなとこで駄々をこねて嫌われたくはない。
颯爽と去って行く望をただ見ているしかなかった。
やはり独りは寂しい。
といっても無口で愛想もなく、左手を耳に当て、イヤホンに意識を集中させているガードマンが二人いるのだが……。
目の前にあるクッキーを口に運び込む。余り美味しくはない。
差し出されたエスプレッソもすっかり冷え切ってしまった。
「ねぇ、悪いんだけどおかわりを貰って来てくれない?」
近くのガードマンに話し掛けても反応がない。
「ねぇ! きいてるの?」
いらだったまま席を立ち、ガードマンの肩をこずく。
するとその巨大な男はまるでボーリングのピンの如く頭から勢いよく倒れ込んだ。