突然なことに言葉を失ってしまう。
背筋に悪寒が走り、顔面は蒼白、一体何があったのさえ検討もつかなかった。
はっと我に帰った光はもう一人のガードマンに目をやる。
そこに微動だにせずに立っているはずの黒人が仰向けになって転がっていた。
「嘘よ……何かのまちがいでしょ……」
するとテラスの屋根の上から黒いロープが二本、するすると光を囲むように垂れて来た。
未だに理解不能なその高校生をしりめに、防弾チョッキにライフルといった重装備の二人の男がロープを伝って地面へと着地する。
この間約５秒足らず。
「動くな！！ 両手を頭の上に乗せて地面に伏せろ！ 早くしろ！」
頭がおかしくなってしまったのではないかと思うしかなかった。
そんな状況の中でも、光は言われた通りに体を伏せ、両手を頭の後ろへと廻した。
一人が銃口を向けたまま、身体中を入念にチェックしている。
もう一人は周りに人影がないか、中腰になりながら警戒を強めることを止めない。
「やめてぇ！ 助けてぇ！ 誰かぁ！」
声を精一杯絞り出したが、男にさるぐつわをされると声が出せなくなった。
すると私を護衛していた黒塗りの車がこちらにゆっくりと近付いてくる。
『やった……助かった……』
心の中で安堵の溜息を漏らした。
しかし、その車は私の前でゆっくりと止まる。
『えっ……』
その勘は見事的中。
中に乗っていた私の護衛に付くはずだったスーツを着ている男二人が、悠々と歩いてくる。
一人は白人、もう一人はどうみてもモンゴロイドだった。
「任務完了だ。早く空港まで連れていけ」
銃口が向けられたままの状態で、一人の武装した男が私のガードマンに促した。
「心配すんな。事態は実に順調だ」
本当に外国人なのだろうか、ほぼ完璧な日本語である。
それにしても私は何故こんな目にあっているのだろうか。
「ほら！ 早く車に乗り込め！」
ぐいっと髪の毛を掴まれ体が自然と前へ動いてしまう。
「武器の処理は俺に任せろ」
そういったのはあのモンゴロイド。
「あぁ、後は任せたぜ」
そういって武器を手渡した。
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