ヤス#160
香月が心配だった。恭子に香織。無事だろうか。
ヤスはアクセルを踏んだ。ガレキとなった街が後ろへと飛んでいく。全てがシットの仕業だろうか?あのシットにこれほどの力があるとは思えなかった。とすれば、更なる強敵が現れた事を意味する。
星が煌めいている。ひとまず安心して良いだろう。
ヤス達は香月に着いた。うっすらと灯りがついている。自家発電だ。香月には発電機が備えてあるのを思い出した。ヤスは玄関のドアを開けた。
店の中は嵐の飲まれたかのような有様だった。床には皿が散乱している。
「大将!女将さん!…恭子さん!…誰かいないのか!」
奥で物音がした。そして、恭子が泣きながら出てきた。
「うあああ!やっちゃん!無事だったのね!…やっちゃん!」
恭子がヤスの胸に飛び込んできた。
「ヤス…無事だったか…心配したぞ」
「大将!無事でしたか」「ああ。凄い嵐だった…あっという間に、この有り様だ」
「女将さんは?」
「それがな…竹内親分と出かけたまま、まだ戻らん。なあに、あの親分の事だ。心配はないさ」
「香織は…香織は大丈夫かな…」
「うん…電話はパンクしてるし…心配なの」