一条フサエ殺害後、世間がこの事件をどう見るか、梅城ケンヤは大筋の予測はしていた。
彼や彼のZ区立第三中学校・生徒会関係者の実名は報道されない。
実際に一条フサエを殺した遺族達は、生徒会関係者の肩書があるから逮捕されない―\r
全ては【学校内司法自治全権委任法】の分厚い壁によって守られる。
しかし―\r
蓋を開けて見れば、予想以上な予想通りの展開振りに、ケンヤはむしろ呆れた。
普通は形だけでも正論を吐く記者やコメンテーターが出てくる筈なのだがな―\r
まあ、お陰でたやすく完全犯罪成立な分けだが―\r
警察は完全自治が認められている学校関係の事件には関わりたがらない。
マスコミはそもそも、つまらない真実よりも視聴者が喜びそうな結論しか報道したがらない―\r
はっ―\r
これじゃ、全てをイジメグループのせいにする一般生徒と変わらんな。
つまり国民も、見たくない現実からは目を反らし、ただ都合の良さ気なモノしか見ようとしない。
知ろうともしない―\r
害虫が沸くのは、水自体が汚いからだ―だとしたらこいつら視聴者も愚かで無知で浅薄で無責任―\r
そしてその自覚すらなく、全てを一部のテログループや荒れる若者のせいにして安心しようってか?
ふん、下らん。
見たくなくてもいつか見せてやるさ。
この俺がな―\r
梅城ケンヤは暗い決意を新たにした。
だが―\r
脅威や懸念が全くない訳でもない。
愚かな世間なんかはどうでも良い。
そんなのよりも何倍の知恵と力のある存在があるのだ。
しかも身近に―\r
一つはネットだ。
マスコミでは伝えない情報の全てが即座に・大量に流され、不特定多数の耳目に触れる。
嘘も真実も、嘘とされた真実も様々に飛び交い、それが大勢の手を経て、更なる嘘を呼ぶ。
ある意味マスコミよりも厄介な存在だ。
恐らくこの事件の正確な情報が、かなりの程度流され、それは自分の疑惑へとつながりかねない。
だが、この点はぬかりはない。
カネにモノを言わせて、既に対策要員を雇ってある。
蛇の道は蛇だ―\r
彼らが事件を隠蔽し、真実を撹乱するためあらゆる偽情報を流す。
パーフェクトではなくても、事態をうやむやにするには十分だ。
だからこの時点で、梅城ケンヤはネットを恐れてはいなかった。