一人がつらいとは思わない。それは、秋に対する自信があったことや仮につらさを持つと、普段らしくない様子を感じ取られて、ミルクに飽きた猫のように、離れてしまう秋がいたことが理由。変わらないこと、無条件に寵愛できるのはそれだけだと云った。
台風は突然やってくる。ニュースを見たら、海に渦がある。大きな雲がまわり、小さな雲を食べてゆく。
寂しさの感情。
それを秋は食べていた。私の寂しさを有無を云わず、ただ黙々と。日に日に薄くなって、見えなくなる。だから、一方的な感情を強く表さずに、調和のとれた関係を継続させることができた。
『寂しさという忘れ物』唯一、秋が迂闊だったもの。時を経て、寂しさは別に新しく構築された。今になって何年も前の私は、人間としてあるべき飢えを見失っていた、と。
好きだ、一緒にいたい。
そんな言葉は交わさなかったけれど、知らなくてよかった。寂しさのない私には、その言葉は刺激が芳しい。二人の雰囲気が物語るだけで、ずっと十分だった。
季節がやってくる度思い出す、秋。
あなたは、愛々しさを植えて寂しさを抜いた。
それはひどいことだと気づたら、涙しか…。
秋…何で寂しさ教えてくれなかったの…?