朝起きたら、昨日と違う風景があった。
いつもいた君がいなかった。
毎朝、僕が起きると『おはよう』と笑顔で言ってくれる君がいなかった。
「あ…別れたんだ。」
ぽつりと僕の口から出た言葉は、
擦れた小さな声にも関わらず、静かな部屋に少し響いた。
起き上がって、洗面台へ行き、目の前に置かれた2本の歯ブラシが目にはいった。
「これも捨てないとかなぁ…」
水の音と一緒に、僕の声も下水に流れていった。
台所へ行き、冷蔵庫を覗いた。何もなかった。
「何か買いに行かないとなぁ…」
冷蔵庫のモーターの音より、僕の声が耳に入った。
君がいなくなった部屋が、妙に広く感じる。
君がいなくなったとたん、独り言が増えた気がする。
そして、その独り言が淋しく感じる。