マドレーヌをもう一度-第三章?

鈴里ユウ  2007-09-24投稿
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…四人の元候補生達が久し振りに一同に会したのは、補給基地セウスにおいてである。 しかし、彼らに喜びの表情は無かった。
互いにそれぞれの活躍は知っている。その様子は、これから戦いに向かう緊張感とはまた別のもののようだった。
「…まぁお互い無事でいるわけだ。まずはめでたいね」
複雑な雰囲気に嫌気がさしたのか、グエンがソッポを向きながら言った。
「本当にそうだよね。生きていれば一番…」
ケイトは最後まで言葉を発しないでうつむいた。
アランはその様子をチラリと見た。
「…そう、俺達は生きている。」
それは何かを確かめるような口調だった。 「なにが撃墜王だ…アジドは初陣で三機撃墜してたぞ。ここにいる誰も出来なかったことさ」
グエンはややイラついたように言った。
「グエン、アジドのことにこだわりすぎじゃないの」
ケリーはやや冷淡に聞こえる口調で言った。
「少なくとも私は撃墜王になりたくて乗ってる訳じゃないし、アジドのことを常に思いやってなんてない」
「…じゃあ、何なんだよ」
「生きるためよ」
ケリーは毅然と即答した。
それを聞いたグエンはため息を一つついた。
「お前は強いな。昔からだが…」
思わずふっと笑う。
「だがな、俺は無理だ。あいつのことが忘れられないんだ。いつか俺のことを迎えにくる気がしてな…」
グエンはそう言って、片手をヒラヒラ振ってその場を去った。
残された三人は暫くその場にいたが、やがてケイトも「行かなくちゃ。またね」と言って走って行ってしまった。
「…忘れてた」
アランはふと、何かを思い出したように言った。
「何よ?」
ケリーが尋ねると、アランはポケットから一通の封筒を出した。 「お前、ケイトと部隊が近いだろ?会ったら渡してくれ」
「…自分で渡せば?」
ケリーは自分が必要以上に苛立ってることを感じながら言った。 しかし、アランが彼らしく無言で手を出し続けてるので、仕方なく受け取った。
「…全く、人の気も知らないで…」
それは独り言だったので、アランには聞こえなかった。
「じゃあ、また会おう」
「また、ね」
ケリーは何かを願う気持ちでそう言ってアランと分かれた。
《また、ね》
ケリーは何故か自分の言ったことが気になって、いつまでも頭から離れなかった。
そして、その不安は現実となって、彼らの運命を左右することになるのであった…



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