この辺りの穏健派をまとめているのは実質的に彼女・九重モエだ―\r
いや―\r
穏健派など、ただの腰抜の集まりだ。
いまそいつらの中でまともな意見・信念を持ち、そのためには闘いすら辞さぬ気概のあるのは彼女一人しかいない。
だから彼女さえいなければ、穏健派何か簡単に倒せる―梅城ケンヤはそう考えていた。
一条フサエの件で、彼女は真相のかなりの部分を掴んだ筈だ。
梅城ケンヤが彼女を恐れる理由は、まだあった。
もし彼女がこの真相を公にすれば、そのインパクトはネットや学内の反対勢力の比ではない―\r
最悪、俺が始末されてしまう。
ソファーに座りながら、ケンヤはペットボトルに手を伸ばし、スポーツドリンクを一気に飲み干した。
さて、どうするか―\r
今、彼女がその手を取らないのは、本人が陰謀を嫌っているとともに、この件に深く関わり過ぎた事で、大きな問題に発展する事を心配しているのだろう―\r
第三中学校は【大国】だ。
梅城ケンヤの強力な改革の下、秩序が確立し、風紀委員会を中心に、膨大な兵力を蓄え、周囲に睨みを利かしている。
どれだけ正統性があっても、彼女はその第三中学校に勝手に侵入し、風紀委員に暴行し、更に部下に命じて両校の境にまで侵攻させ、戦争の構えまで見せたのだ。
つまり、動けないのは向こうも同じか―\r
そこまで考えて、梅城ケンヤは少し落ち着いた。
生徒会は組織だ。
強烈な個性と信念を持つリーダーに恵まれれば、良くも悪くも大きく変わるだろう。
だが、組織だ。
いくら会長でも、そのルールを破る分けにはいかない。
自分がルールを破り、一条フサエ達を始末したからと言って、対抗してルールを破る事が認められる訳がない。
今の所、私立K学院に動きはないが、九重モエも恐らくは内部の信頼回復に力を入れねばならない筈だ―\r
まあこの問題も、上手く片付けて見せるさ―\r
一応の結論を出して、梅城ケンヤはソファーから立ち上がった。
彼には行くべき所があったのだ。