「それじゃあ、行ってくるけん。」
「いってらっしゃい。」
「すまないな。もう、会われへん」
「わかってますよ。それではおきおつけて。」
―時は昭和20年―\r
俺は、呉の海に散った。
特攻隊を知っているだろうか。飛行機に爆弾をつんで体当たりする、捨て身の作戦。それが特攻。
ただ、俺は潜水艦タイプの特攻隊。呉海軍工廠の最高傑作、人間魚雷「回天」に乗り、正確に敵艦を貫く矢になるわけだ。
昭和20年 3月26日。
俺に特攻命令が下ったのはその日の深夜だった。
命令は断れたのだが、
やはり断らなくてよかったらしい。
なぜなら、断った奴らは、隊舎から消えていたからだ上官に聞いてもなにも言わない。
………後で聞いた話だが、特攻命令を断った奴らは、その翌日、海に出た……。
俺の人生は、こんな話しを最後に終った。