ヤス#162
「や、やっちゃん!恭子!…行っちゃった…どこに行くつもりかしら…」
ヤスと恭子が乗るワゴン車はあっという間に走り去っていった。
二人を乗せたワゴン車は住宅街に入った。ここまで走って来た中で最も被害が大きい。障害物が車を遮るように散乱している。そして、完全に道を塞がれた。
「これ以上は無理だな…恭子、歩くぞ」
「うん!もうすぐだから」
二人は手を取り合って歩いた。異臭が漂っている。下水が逆流したのだろう。
「もうすぐよ。ほら、あの公園の前のお家…無い…お家が無い」
恭子は走りだすと公園に背を向けて佇んだ。
「無い!香織のお家が無くなってる!」
ヤスは唖然として佇ずむ恭子の肩に優しく手を載せた。香織の家が根こそぎ消えていた。
「どういう事?残がいも無いなんて…」
「スポットトルネード…」
「スポットトルネード?」
「竜巻さ…それも針のように細長く、強大なやつだ… 」
「根こそぎ持っていかれた…って事?」
「そうだ。もし、その時、家にいたとすれば…」
「居たとすれば…?」
「もう…この世には居ない」
「ウソーッ!そんな事…」
「恭子、来い!非難しているかもしれない…探そう」
「うん!」