それは、木戸竜平(りゅうへい)がまだ横浜の警察に新しい警部として配属されてすぐの頃の話だった。
「ちっ、また赤かよ。」
木戸は車で、現場に向かっていた。警察のくせに、運転しながら煙草を吸い、携帯電話だって、平気でする。しかし、そんな彼も署内では超優秀なエリートと勘違いされていた。それが彼にはとてつもなく気に障っていた。
「エリートだったらこんなとこに飛ばされねえっつうの。クソっ。」
彼のところに飛び込んで来た事件はただの殺人事件だ、被害者は小学生ぐらいで、現場は公園のトイレらしい。
『ただの』といったら不謹慎なのだろうが、少なくとも木戸にとっては、少年の事件にはあまり興味がなかった。
どうせ犯人は三通りに決まってる。
クラスメートか両親か近所の変態野郎しかいねぇ。 被害者の周辺を適当に調べたら三日もしない内に見つかる、いや、二日だな。
そんな事を考えながら木戸は現場に車を走らせた。 すると彼の人生最大の敵が現れた。
「ちっ、また赤かよ。」