博之が死んで３ヶ月がたった。
あの日、あの雨の日に、私が弱音なんかはかなければ博之は死ななかった。
私のせいで博之は死んじゃった。
真っ暗な病院のベッドの上で私は救急車のサイレンを聞いた。
また誰かが病院に運ばれてきたんだ、と何気なく思った。
それが博之だなんて思わなかった。
それなのにちょっとだけ思ってしまった。
博之も入院すればよかったのにな。
「今から行くから。」
電話口で博之がそういってくれてからもう３時間ぐらい経っていた。
病院から遠くに住んでいる博之がそろそろつくころだった。
だけど毎日会いにきてもらえるわけじゃないし、すごく寂しくて甘えきっていた。
だから・・・そう思ってしまった。
そのとき、
「ごめんな。いけなかった。」
博之の声が聞こえた気がした。
「早苗は絶対治るから、がんばって生きろよ。」
博之がいつもそばにいて言ってくれる言葉が聞こえた気がした。
それが博之がどうしても伝えたかった言葉なんだと思う。
ちょうどその声が聞こえたころ博之の命は消えた。
私が博之が死んだことを知ったのは次の日の朝だった。
「昨日のサイレン、交通事故だって。」
「そうそう、ここにお見舞いに来ようとしてたらしいね。」
「ずっと女の子の名前呼んでたって。」
ほかの患者さんのその言葉を聴いて背筋が凍った。
やっぱりあれは博之の声だったんだ。
最後に言いたかった、どうしても言いたかった言葉だったんだ。
もう治らない、もう死ぬんだなんていった私に博之が言いたかった言葉だったんだ。
博之はもういない。
何度も後を追うことも考えた。
だけどそう思うたびに声が聞こえた。
博之が最後に伝えてくれた言葉が何度でも聞こえた。
だから私は生きている。
君の声が私を支えてくれるから。
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