俺は冷たい雨の中、道の側でブルブルと震えていた。
灰色の空から打ち付ける冷たい弾丸は俺の体と心の温もりを冷酷に奪い去っていった。
道行く人から向けられる軽蔑のまなざし。
そして「悪魔」と罵倒される。
中には蹴り付けてくる奴もいた。
親に捨てられて、こんな物乞いの様な生活を初めてもう一週間。
足はおぼつき、体は痣だらけになり、黒い翼は羽根が抜け落ちて所々禿げていた。
俺はその場に倒れ込んだ。
今までろくな人生じゃなかった。
いつも人から受けるのは温もりで無く、軽蔑と偏見のまなざし。
それは両親からも同様だった。
「なんであんたが私達の子供なのよ!!」
「生まれ損ないめ!!
この恥さらしが!!」
脳裏に悪魔の形相の天使が浮かぶ。
殴られて、蹴り付けられて、虐げられる。
もう死にたい。
本当にそう思っていた。
いや、もう死ねるかもしれない。
もう…生きたくない…
楽になりたい…
天国に逝きたい…
そう思っていた。
「…大丈夫…?」
暖かい声が聞こえた。
「酷い痣だわ…早く手当しないと…」
やせ細っていた俺の体は簡単に彼女に抱き抱えられた。
暖かく、優しい香りがした。
彼女は白い翼は無いが…
俺には彼女が天使に見えた。