トイレで顔を洗ってから教室に戻ると、私の席は無かった。
「あなたどこのクラス?間違ってるんじゃない?」
男子は気まずそうに私を見たり、里見さんを見たりしている。先生が入ってきた。
「授業始め…、神谷?」
先生は突っ立ってる私を信じられないって目で見てた。
「先生…」
「はい先生。昨日神谷さんと帰ったってホントですか?」
里見さんが声高に言う。
クラス中がざわつく。
「里見さん?でしたか、帰りましたけど。ちょっと待った。神谷さんの机と椅子は?」
クラス中のざわつきが収まらない。
「生徒との不純異性行為ですね」
里見さんの周りの女子も先生を睨む。
「え?いや、家まで送っただけなんだけど、ダメ?」
「口ではなんとでも言えます。でも彼女が居残り掃除させられたと」
「それは、神谷さんが遅刻したから罰として」
「信用できません。先生は神谷さんの家まで何をされに行かれたのですか?」
先生は里見さんを不審そうに見たあと、私を見た。
「送った…だけです」
「理由になってないですよね。送らなければならないくらい遅くまで掃除を?」
そうだ。
先生との話が弾んで、ついつい居残ってしまって。
「それは…すみませんでした。こっちの不手際で…」
私のせいで先生が頭を下げた。昨日寝坊なんかしなければ、こんな事に。
「先生ご存知?昨日は神谷さん夜からお仕事があったのよ?ね。神谷さん」
私は知らずに涙を流していた。クラス中が静まる。
「し、知りません。先生…私」
「里見さん授業が終わってから聞きます」
「逃げますか先生?良いですよ、この事はクラスの中の秘密にしましょう」
「里見さん、いい加減にして下さい。」
「せ、せん…せ。ごめんなさい、私。私、風俗店でバイトしてます!」
クラスの誰も喋らなかった。
しばらくして里見さんが沈黙を破った。
「残念ですが、彼女は退学です先生」