「いらっしゃい。ったく、ふざけるなよ」
「ごめん……なさい」
「まずなんでお前の両親は会ってくれないんだ?」
「ふたりとも仕事で…忙しいから」
笑顔でごまかしたつもりだけど、多分通じてない
あちこちにダンボールが積んである部屋に先生は住んでいた。
「地元…じゃないんですか」
「ああ、お前遅刻して来たから知らないのか。転勤」
「そうなんだ」
私はこの人の何にがっかりしたのか分からなかったけれど、ちょっと沈んだ気分になった。
「両親どっちも仕事か、兄弟は?」
「一人っ子です」
「両親に心配かける仕事しちゃダメだろ」
「大丈夫です。心配してませんから」
「お前どうしてそう悲観的なんだ?」
「先生…私、居場所が無いです。助けて下さい」
事実だった。
本当に居場所が無かった。
だからこの時先生が居なかったら私は多分。
「いくらでも助けてやるから。当たり前だろ?」
「先生…!」
思わず先生に抱きついてしまった。
「何回泣いてんだよ」
先生がポンポン背中を叩いてくれて、すごく楽になった。