翼 11(終)

 2007-09-30投稿
閲覧数[242] 良い投票[0] 悪い投票[0]

放課後の屋上で二人は夕空を見つめていた。

「妹さん?」

雄二には妹がいた。
だが、雄二が高校生で、妹が中学生の時、いじめを苦に自殺したのだった。

「なんか最初志保里と会ったら、ダブっちゃって。ダブったって言えば、留年したって言ったろ?いじめが理由だって知ったとき中学に殴り込んで、それが問題になって、留年になった」
「そんな…」

「今回も俺に言わせれば里見に殴り込んでやりたいけどよ。志保里、理不尽に負けるなよ」

「え…」

「文句言ったり、殴り込んでもどうにもならないことがあるんだよ。だから、そこで負けるな。お前は自分で退学を選んだ。里見から逃げ出したわけじゃないけどな」

「もちろん」

「俺を助けてくれた。妹は死んじまったけど、お前まだ生きてるから。逃げ出したい時は逃げろ。負けちまうよりはるかにマシだ。」

「うん」

「あと出来れば泣くな」

志保里はまた泣いていた。

「こういう…性格なの」

「そうか」

夕陽が二人の前に落ちて眩しくなってきた。
目をそらした先に二人はお互いの瞳を見た。

二人は口づけを交わした。

雄二がそのまま志保里の手に握らせた手のひらの中には、生前妹が買った安物の指輪が握られていた。


「神谷志保里さん、結婚して下さい」



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 輪 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ