私はいつからあの奇妙な夢を見るようになったんだろう。
あの日だ。
一ヶ月前タクと最後の電話をした日からだ。
彼はその時、すでに私としゃべる事すらおっくうそうだった。私は泣きながら笑っていた。
「なんであんたの方が被害者ぶった感じなの」
「はいはい、もういいって」
唇が震える。
言葉が出ない。
口の中が苦くなる。
瞬きすらできない。
闇が広がる。
モワモワ…モワモワ…
「クククク……エミちゃん、怒ってるの〜?泣いてるの〜?笑ってるの〜?」
妖怪。
また妖怪の街に来てしまった。
ここに来ると吐き気がする。
茶色い妖怪が私の周りを軽やかに周っている。
「あ〜エミちゃん、結婚したかったのに〜クククク…」
うるさい。
黙れ。
黙れ、妖怪。
おまえに何がわかる。
おまえに何が……わかるんだ…
妖怪はまたフラフラ闇に消えていく。
消えていく……
「お客さん!」
ん?
「こんなとこで寝られちゃこまりますよぉ」