一同は沈黙した。その直前に話していた大黒は戸惑っているのだろうかと未央は察した。
しかし、夢のくせに生意気だ。降りることができないし、面白味もない。白田は虚無感に苛まれた。
「早く見つけちゃいましょうよ。いい加減、夢の中も飽きましたわ」
橋本の提案も無視して、ついついこんなことを口走ってしまった。数秒後、思いとどまって
「すいません。白田です。」と、付け加えた。
「木村ですが、気にしないで下さい白田さん。私もこんな陰気な夢は嫌いですから。」
介護士と言っていただろうか、木村真由が同意してくれた。
「橋本だが、とりあえず体が動かない。飢える前によく話してみて奴を見つけよう。」
橋本が少々偉そうに言った。
「大田ですが、ひょっとするとこの7人はわりと近い位置で円形に座ってるんじゃないですか?どなたの声も大きさがほぼ同じですし。」 この声の持ち主はアルバイトと言っていたが、予想に反して合理的だった。こんな世界でよく位置関係などを考えられるなと。
「佐野ですが、皆さん手は動きますか?僕が動くんで。もしかしたら両手を伸ばせばぶつかるかもしれませんよ。」
皆が積極的に発言するようになってきた。気に入られようとするのではなく、疑われないように。自分が疑われても終わりだ。
佐野の予想は外れた。この男は大いに反省しているだろう。