暗がり迫る墓地の中で、連中はますますふざけまくり―\r
『お〜い、シズコぉ〜良かったなあ〜友達のいないお前何かのために俺達わ・ざ・わ・ざ、来てやったんだぞ〜?』
『おい、な〜んか言ってみろよお〜ははっ、生きてる時もな〜んもしゃべれなかったからなあ、こいつは〜♪』
男が二人、持っていた缶ビールを墓石に乗せ、叩いたり蹴ったりして無言のそれをからかい始めた。
『にしてもさあ―こいつ、死ぬまで俺達の事【友達】だって思ってたんだぜ?ただイジメてただけなのにコミュニケーション取ってくれてるって勘違いしてやんの〜』
『うっわーコイツいて〜♪』
『まあ、実際誰もこんなヤツと付き合わなかった訳だしさあ―俺達って案外優しいんじゃねえ?』
『こうやってちゃんと墓参りしてやってんしな―ほらよっ』
すると、墓石に置いた缶ビールを掲げて、男の一人が中身をぶちまけた!
更に―\r
『ぎゃははは!俺の聖水もかけてやるぜ!』
もう一人はジッパーを下ろして墓石の反対側に小便を浴びせたのだ!
『キャハハハッやっだあ止めてよお〜』
それを眺めて女達ははしゃぎ回り、携帯でその画像を写し始める―\r
隠れて見ながら梅城ケンヤは自分の目を疑った。
今目の前で死者を辱めているのは―\r
不良でも暴走族でも暴力団でもない。
少なくとも見た目は、スーツを着たれっきとしたサラリーマンやOL―つまり社会人の筈だ。
20〜30代・比較的若い世代の集まりらしく、仕事上がりに一杯引っ掛けて来たのだろう。
多少酔っぱらってはいるが、とにかく彼らはちゃんと働いて税金を収め、中には家庭を持っている者もいるだろう【大人】の筈だ。
本来なら、イジメや非行を否定しそんな事をする生徒や学生を叱りとばすべき身の筈だ。
少なくとも、テレビカメラやネットの中ではしかめつらしい顔をしながら今の【常識のない未成年】の蛮行を口を極めて罵り・非難し・説教し、自分達の世代の美談をまくし立てて、優越感たっぷりに現状を嘆いていた筈だ。
だが―\r
『あ、そういえばお前、コイツとセックスしたんだってえ〜?』
『お、おい、ずっと昔の話だろ?罰ゲームで仕方なくやったんだよ―この馬鹿よお、拒むかと思ったらすぐに股開きやがったがなあ』