幻影

ゆちち  2007-10-01投稿
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胸を焦がし,甘い溜め息をつき,貴方を身体で感じる。
泣きたくなるような幸せ。目を開けたくない。
「亮介──」
貴方の吐息が頬を滑り,項を撫でる。
開け放した窓の外からそっと覗く秋の風は感じない。
つやつや流れる貴方の髪にかかる月明かり,真っ暗闇の部屋に2人のかたちを映し出せ。

明けるな。夜よ,明けるな。
また露わになる寂しさがあるから。
どこかで季節外れの花火が鳴る。
愛してる,アイシテル──……。

誰かの為に生きているなら,どんなに幸せだろうか。
目に見えぬ愛というものよ,
何故人は人を愛するのか。
愛無しでは生きられないのか。
学校では習わない。どんな良い予備校でも教えてくれない。
嗚呼,何処かに愛を教えてくれる場所があればいいのに。

私は弱い人間だ。強く生きようとした事もあるが,やはり私は弱い人間だ。
誰かに笑われるかもしれない。
誰かに馬鹿にされるかもしれない。
でもどうしようもないこの気持ち,
私は貴方の温もりが恋しい──。
嗚呼,明けるなと言っているのに,東の空は赤みを帯び,街は次第に起き始める。
朝日が苦手な『寂しがり屋』は分厚い布団を頭からすっぽりと被り,明るい鳥の声に耳を塞ぐ。

──ゆ き──

貴方の声が遠ざかる。

寝られない夜が終わる。

幻の貴方のその笑顔も,消えてゆく──。

愛しさよ,朝日と共に消えてしまえ──……。

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