「一体どうゆうことなの?」
今の自分が何故ここにいるのか、何故追われているのか、父が侵した犯罪との関係は何か……。
その核心に触れる事ができると感じた光は、身を乗り出さずにはいられなかった。
「君のDNAにある」
「血液ってこと?」
「まぁ、そんなとこだな。正確には君の皮膚を少し頂きたい」
本や映画等でしか知らないその存在。
その”DNA”が原因で追われている、ただそれだけで今、自分は苦しい思いをしているのだ。
光にはそれが信じられなかった。
「ただの皮膚が欲しいのならば、私自身は必要ないでしょ?」
「一概にそうとも言えない。我々は精確に、しかも大量の情報を得る必要がある。君から少しの垢なんかを採取した所で全くの無意味だ」
光は、無菌室で白い服を着た研究者達に、自分の至る所をナイフで切り取られるシーンが頭に浮かんだ。
「……私を付け回す意味は分かったけど、何のために必要なの?」
「それは後でCIAの日本支部に着いたら教える。もう話は終わりだ」
光は納得が行かない。
「今教えなさいよ! 私は被害者なんだからね!」
「上からの指令でこれ以上は口止めされている」
望の目をミラー越しに見るかぎり本当のようだった。
「んじゃこれだけは答えて。私を襲ったあいつらは何なの?」
「奴らは、雇われているだけの素人だろう。武器、訓練の甘さからして判断できる」
「雇ったのは誰なのか分かっているんでしょ?」
「不明だ」
耳を疑うしかなかった。
「はぁ?」
「何度言わせる。不明なんだよ。俺達の全力をもってしてでも見付けることが出来なかった」
「CIAもたいしたものね」
「お褒めの言葉ありがと」
二人は黙り込んでしまった。車は光の知らない道を真っすぐ走り続けている。
信号が赤になり車がゆっくりと停車した。雨は先程よりも一段と勢力を増しているようだ。まだ3時だというのに窓の外は真っ暗である。
「君を襲った奴らやガードマンだが……」
先に口を開いたのは望。
「死んではいないよ」
「え? だって目の前で撃たれたのよ!」
「眠らせただけさ」