『へえっ、リョウ君てこんな女が好みだったんだあ』
『だ、だからっ!罰ゲームなんだよっ!でなきゃ誰と寝るかよこんなブサイクなんかと!』
『ぎゃはははっ、何焦ってんだよ!!』
ケンヤの目の前で繰り広げられた―\r
これが大人の姿だ。
―こ、こいつらぁぁぁっ!!!
恐らくは今荒らしている墓石の主を自殺させた同級生―つまりイジメグループだろう。
ナツを死なせた一条フサエ達の数年後の姿がそこにある。
幾重もの怒りに晒されて、梅城ケンヤの脳内血管は今にも破裂しそうになった!
―だが
だめだ―\r
今ここで俺が出ても、ただの中学生だ。
ここは学校じゃないし、第三中学校の学区ですらない―\r
学校内全権委任法も生徒会長の肩書きも、ここでは通用しない―\r
逆にここで揉め事を起こせば、不利になるのは俺だ―\r
高まる怒りをケンヤは必死に抑えなければならなかった。
一条フサエを葬ったのは、ついこの前だ。
その影響が残る微妙な時だ―\r
今不祥事を起こせば、俺の地位も、改革も一夜で崩壊する。
反対派が手ぐすね引いてその機会を待っているだろうし、さすがに自分の身に起こった事実まで隠しおおせる訳はないからな―\r
墓石の回りで傍若無人の限りを尽す年長者達を睨み付けながら、ケンヤはただ我慢するしかなかった。
どれだけ悔しくても、今は堪えるしかない―\r
―待てよ
ケンヤの頭に、ある閃きが生じた。
この前買い替えたばかりの携帯をとっさに取り出して開き、カメラ孔を連中に向けた。
警察に電話しても、繋がらない時代だ。
繋がっても、この位の事で警察は来ない。
だが、証拠があれば別だ。
赤外線撮影で、梅城ケンヤは連中の顔を一人一人アップで取り、更にその馬鹿騒ぎもきっちり録画してやった。
―ふっ
何とかと頭は使い様だな。
ケンヤはネットで警視庁にアクセスして、通報してやった。
もちろんその動画を添付して。
これで警察は連中の身元を調べ上げ、それは会社にまで及ぶだろう―\r
仮に逮捕されなくても、これで連中は破滅さ!!
会社内で居場所を失い、少なくとも出世コースからは外される!
ざまーみろ
ケンヤの表情は、権謀まみれの勝利の喜びに歪んだ―\r