犯行現場には沢山の野次馬とマスメディアの人間が来ていた。
その人達を掻き分け、木戸は捜査班のところに近づいた。すると一人の男が話しかけてきた。
「あっ木戸さん。遅かったですね。」
そう言われるも木戸にはその男の記憶がなかった。
「ええと、誰だったかな。君は?」
「何言ってんですか。俺はアベですよ。阿部ノリト。」
「ああ、阿部君か、最近物忘れが酷くてね。」
木戸は物忘れが決して悪いわけではない。ただ人に興味がないのだ。
「んでー、被害者の身元は?」
「北澤真一(しんいち)、小学六年生です。」
それを聞いた後、木戸は遺体に近づき、しゃがみ込んだ。強烈な血生臭さがした。その臭いに思わず鼻を塞いだ。
「見た感じ、凶器は鋭利な刃物ってところだな。ただその凶器がないようだが。」
「はい、多分、犯人による証拠隠滅の恐れがありますね。だから只今、証拠も合わせて捜索中です。」
「なかなか手際がいいな。まあそれだけ優秀ってことか。」
「ありがとうございます。木戸さんみたいなエリートにそう言ってもらえて、光栄です。」
木戸はもう愛想笑いするしかなかった。
こいつも勘違いしてるのか・・・
そう思ったにちがいなかった。
「じゃあこの遺体をすぐに鑑識にまわそうか。」
そう言うと木戸は立ち上がり、同時に先程出会った小学生の女の子のことを思い出した。そしてボソッと小さく呟いた。
だから子供は嫌いなんだ。