南沢 龍―――\r
――その者はかつて
英雄と呼ばれた者だった
まだ白冬が
生まれてもいない頃――
「お〜い龍!そろそろ行くぞ」
「おぅわかった!すぐ行く!じゃあなガキ共!!!」
「えーもう行っちゃうの?」「しょうがないだろ?俺だって忍者なんだから仕事しねーと」
「そっかぁ…じゃ、また今度ねー!おじちゃーん!」
「バイバーイ!」
「また面白い話聞かせてね〜」
「お〜…って、おじちゃんじゃないって言ってるだろ〜!」
「キャハハハ」
クモの子を散らすように
彼の周りから子供達が
はなれていく
それから彼は待っていた仲間のところへ向かった
「悪い悪い」
「相変わらずの人気だな」
「ほんと!龍を探すより子供が集まってるところを探すほうが楽なんだもの」「ははっ!見つけやすくていいだろ?」
龍は優秀な忍で
仲間の信頼も厚く
また、その人柄からか
多くの人に好かれた
「今回の忍務はちょっとやっかいだな。けっこう長引きそうだ」
忍務の書かれた紙を
見ながら仲間の一人が
言った
「あぁ、他国のスパイだろ?この国を狙ってる」
「この国を傘下におさめて天下を狙うとこがあるのね」
「あぁ、ここで奴らの進撃を止めなければいずれ戦争になる」
「絶対に食い止めるための俺達援軍だ」
彼らは立ち止まり
マントを羽織り仮面をつけた「味方は今どこにいる?」
「ここから南東に500kmだ。2日で合流する」
一団は走りだした
1日後――
「…何か感じないか?」
「俺も思っていたとこだ」
「何か…変よね…」
「どういうことだ…目的地まではあと半日かかるはずなのに…」
彼らが感じ取った
妙な感覚は
間違っていなかった
すぐに仲間の軍集が
彼らの目に写った
「どういうことだ?なぜこんなに国の近くに来ている?」
「ああ、援軍か!助かった」
「何が起きている」
「それが―――」
その男が言うには
他国のスパイの捕獲を
目的にして近付いたが
他国のスパイが
想定より強く
四苦八苦しているうちに
援軍を呼ばれここまで 攻め込まれたという
「死傷者が沢山出ていて、もうこっちからは手を出せなかったんだ」