『し…モノよ…』
…!?
『選ばれしモノよ…』
なんだろう。懐かしい声。
『っ…う…』
僕は今日もその声で目を覚ました。
しばらくぼーっとしてみる。
程よい暖かさが俺をまた眠りに誘う。
一瞬誘惑に負けそうになるが、そうはいかない。
なぜなら俺は高校三年生で受験生だから。ついでに言うと、俺はもう1日も休んではいけないらしい。
学校のルール。
仕方なしに支度を済ませて家を出る。
行ってらっしゃいの母さんの声を聞き終えると同時に、俺はヘッドフォンをつけた。
プレスリー、ジミヘン…色々。
音楽は素晴らしい。まるで書きかけの下書きの絵に、夢色で全てを塗りつぶすかのよう。
ちょっと古いけどね。
二年かけて通いなれた道を俺は走り抜けた。
別に走らなくても間に合うけど。ただ…なんとなく。
走ったせいか今日は校門前に五分前には着いていた。
俺にしては早いほう。
俺はたくさんの生徒に紛れながら校内へと向かった。