パーティ会場は混沌と化していた。
「何処だ!!何処にいるんだよ!?」
一人の黒翼人がそう呟いた瞬間だった。
スゥ……
腹に痛みは感じ無いが何かが突き刺さった。
見てみると、腹から青い刀の切っ先が飛び出していた。
しかも何故か腹を貫通しているのにも関わらず、血が付いていない。
「え…!?
なん…でぇ!!??」
そして刀が引き抜かれると同時に、全身の力が抜けて倒れ込んでしまった。
「なんだよこれ…体に力が入らない…
意識はあるのに…」
そして黒翼人達はすり抜ける幽霊刀に刺され、斬られて次々と倒れていった。
*
『胸。』
シュっ!!
『首。』
シュ!!
『腹!!』
シュッ!!!
黒翼の男は的確に急所に明刀を突き刺しながら、敵を斬り伏せて行く。
何しろ相手は手が浮遊魔法により殺されているので丸腰同然だった。
『次で10人目…』
そう思い最後の10人目の目の前に駆け寄り、明刀を降るおうとした時だった。
「動くな!!こいつがどうなってもいうのか!?」
その黒翼人は奇跡的に無傷で、一人の天使の女性…麗奈を人質に取っていた。
「これ以上近付いてみろ!!
この女の命は無いぞ!!
武器を床に置け!!」
「クソ…
仕方ねぇな…」
黒翼の男は明刀を床に置いた。
「よーし。
そしてそのまま…!?」
黒翼人の言葉はそこで詰まった。
「なんだこれは… 熱い…
体が…
熱い…」
黒翼人は体を震わせて、びっしょりと汗をかいている。
対して黒翼の男は、先程まで紫だった瞳が血の様に赤く染まり、黒翼人を睨み付けている。
そして…一瞬ニヤリと笑った。
「アァアァァァ!!!!」
ガチャン!!
黒翼人の刀が『手首ごと』落ちた。
そして落ちた手も黒翼人の体も激しい炎に包まれた。
「アァあァぁァァァァ!!!!」
黒翼人は苦しそうにもがき苦しみ、泣き叫んだ。
まるで火炙りにされた魔女の様に。
叫び声が聞こえなくなり、しばらくして炎が消えた。
残ったのは、灰だけだった。