「眠らせた?」
「あぁ、そうだ。ぐっすり眠って貰った」
「麻酔銃だったの?」
「そうゆうことだ。奴らも大事になることを避けるために麻酔針を使っていたみたいだな。しかも、相当性能の高いやつを」
「素人が?」
「多分、上からのお届けものだろうな。たかが麻酔針で死んだように見せかける技術は相当なものだ」
「じゃあ何で私に向かって発砲しなかったのかしら?」
確かにその通りだ。普通に考えるならばターゲットを眠らせてからの方が仕事をこなしやすいはずである。
「……君を傷付けてはいけない何かがあるのかもな」
Jはいつもながらに外の風景を見つめている。光と望は頭がこんがらがってしまっていた。
しかし数分経つと、光の頭にはそれ以上の疑問が突如として浮かんだのだ。
「今、気になったんだけど……」
「何だ?」
「普段CIAは通称名でしか呼び合わないの?」
「あぁ、俺みたいに望。そいつみたいにJとかな。それがどうした?」
「じゃあ神宮寺 望ってのは偽名?」
「今頃気がついたのかよ」
「じゃあ望さ…望君は望じゃないってこと?」
「少し違うな」
混乱している光を見て、意味深な笑みを浮かべた望はマイペースな口調で話し始めた。
「この際、明らかにしておこう。確かに神宮寺は偽名だ、だが望は正真正銘本名。俺の名前は新田 望」
光は新田という苗字を壽学園では耳にしない。
「あらた……」
自分では理解できない事だが、何故かほんのり顔が熱くなっているのを光は感じた。
「ちなみにもう一つ誤解を訂正しておこう。おれは19歳だ」
「……え!?」
「歳を偽って学園に忍び込んだのは事実だ。まぁ、そうしないとお前と接触出来なかったしな。おかげさんで高二で運転も出来るって訳だな」
どんどん顔が赤くなる。
「JについてはJしかしらない。こいつは気が向いた時にしか喋らないらしい」
『……新田……様……年上…… … …』
今の光には望の声すら聞こえていないようだ。
いきなりの新事実、しかも想像より遥かにプラスなサプライズ。
今のどん底から救い出してくれる天使のようだった。