…宇宙の覇権を懸けた第一次銀河大戦は、幾つもの星間国家の興亡を繰り返し、人心を疲弊させた。
結果、統一国家を望む声が高まり、国家の連合を呼んだ。
そうした流れの中で、ついに宇宙は「アファーム帝国」によって統一されたのである。
帝室は「アファーム家」によって受け継がれ、「銀河暦」の採用など、新たな人類社会の環境を整えていった。
帝国の統治は安定し、少数派の共和政治主義者は、地下に潜っての活動を余儀なくされた。
しかし、名君がいれば暗君もいるものである。
第二十代皇帝グスタフ三世の治世をきっかけに、銀河は大きく変動することになるのである。
皇帝には太子がいたが、それが頼りなくて仕方が無かった。
そこで、皇帝は人材を求めながら、十人もの養子をとったのである。
グスタフ三世はその子達をもって帝室の強化を計り、「フォン」の号を授けて「アファーム帝室貴族階級」を形成したのである。
これに皇帝は満足し、老齢まで生きたが、ついに病に倒れて意識が戻らなくなった時、事件が起こる。
太子が宇宙船事故により、急死したのである。
続いて三日後にはグスタフ三世も崩御し、後継者を巡って、不穏な空気が流れる。
ほとんどの帝室貴族達は、自分から皇帝になろうとはしなかった。一般社会から登用されたものもおり、野心と無縁な人物が多かったのである。
結局、争いは水面下のものに止まり、皇太孫カールが形式的に皇帝になったものの、銀河は三つの勢力に分かれたのだった。
イオニア星域に国家を建てたアルベルトは、自らをアファーム家の正統的後継者をなのり、ドーリア星域に民主共和国家を建てたフランシスに恭順を求め、皇帝カール二世の安全も危ぶまれた。
しかし、それは帝室貴族のブルガールがアカイア星域に一大勢力を拡げ、皇帝に忠誠を誓ったために回避される。
彼は公王に任命され、「アカイア公国」が誕生した。
それでもイオニア王国とドーリア連邦の緊張は次第に高まり、ついに銀河暦二三○年五月一日、両国家の間に星間戦争が始まったのである。
これが「第二次銀河大戦」の始まりでもあった。
公国が中立を守り、連邦は守勢を徹底したために、戦いは長期化した。
銀河暦三○ー年の「アルテミシオン星域会戦」によって王国が連邦を大破したが、宮廷内部の混乱から決着には至らない。
それからさらに六年の月日が流れた…