心配されない男

一撃  2007-10-03投稿
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「もう別れましょう。」彼女は言った。僕は突然の出来事に固まってしまう。その後は、僕がわかった・・・と言うまで、何を言っていたか覚えていない。たぶん、何で?とか、別れたくない!とか言ったに違いない。理由さえ覚えていない。いや、覚えていないんじゃない。理由は最初からわかっている。「一人で何でもできる」それだけのこと。昔からそうだ、「何でもでかるよね!」とか、「おまえに任せれば安心だわ」とかそんなんばかりだ。僕は両親からも心配されたことなどなかった。

次の日、目が覚めると、昼を過ぎていた。昨日、彼女と別れたのが夜中だったから、半日近く寝ていたことになる。就職先も決まり、バイトと恋愛ぐらいしかやることのない大学四年生にとって、今日からの毎日は暇なものになるな。起き上がり顔を洗う。腹も空いてるし、金はある。今日は気分転換も兼ねて豪勢な少し遅めのランチを取ることにした。

街は賑わっていた。とりあえず落ち着けるようにファミレスに入った。席に通された時に気づいた。男一人は俺だけ。後はカップルばかり。でも気づいてしまった。昨日ふられたことはそれほどショックじゃなかったことに。自問自答する。俺は人を本気で愛したことがあるのだろうか?誰からも心配されずに生きてきた俺は愛されてこなかったし、また愛してこなかったのではなかろうか?悩んでもしょうがない。今は目の前に並べられたステーキセットを平らげるだけだ。

満腹満腹。おなかいっぱいになり、缶コーヒー片手に公園のベンチで煙草を吸っていると、携帯がなった。知らない番号。誰だ?「もしもし。」俺はとりあえずでた。「あ、あの佐藤さんの電話ですよね?」確かに俺は佐藤。だが、このような少女の声をしたような人とは知り合いではない。「はい、確かに佐藤ですが、別の佐藤さんと間違えてませんか?」「え?佐藤ユリさんのお兄さんじゃないですか?」「ユリは妹だけど、僕の番号あいつに聞いたの?」「あ、はい。悪かったですか?」「あ、いや別にいいけど、用件は?」「あ、あの、私と付き合ってください!」突然の告白だった。会ったこともない女性に告白されるなんて・・・これが僕、佐藤公康と河東エリナとの出会いだった。

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