なぁ、覚えてるか?
どっちが先に一人暮らしするかって、昔よく話してたっけ。今になってあの頃の事を鮮明に思い出す。
「待ってろって言ってよ!」あんなに泣きじゃくるお前を見たのはあの夜が初めてだった…。
――言えるわけない。こんな俺を待てだなんて、言えないだろ?
子供の頃からの夢を諦めきれない。そんな自分勝手な理由で、俺はお前の手を振りほどいた。
お前はきっと、五年でも十年でも俺を待ち続けるだろう。意地っ張りで頑固のくせに泣き虫で…俺だけを見続けてくれたお前だから。
あれから二年か。今頃はいい奴見つけて幸せになってるのか?
俺な、今一人暮らししてんだ。もし…な。もしまだお前が一人でいるなら…。
何考えてんだ。約束なんて何もない。あの夜、確かに俺達は別れを選んだ。いや、一方的に選ばせた。
でも…。
「くそっ!」
目の前にある携帯を手に取る。二年経っても忘れることのできない番号。
・・・二回、三回、四回。虚しく呼び出し音が鳴り続ける。…出ないよな。
当然だ。そう思い電話を切ろうとしたその時。懐かしい声が聞こえてきた。