黒いカーテンで部屋を締め切り、明かりは机のパソコンだけ。一般社会から隔離された私だけの世界。そう…世間で言われるニート。私はそれに当て嵌まる。家族とも会わずにパソコンで、顔を知らない人達との会話。声の出し方をどうやら忘れてたらしい。まぁ、楽で良いけどね。
気分も乗らず、いつもパソコンを開ける時間に私はベットに居た。何気なく、何年も開けてないカーテンの隙間から少しだけ外の世間を覗いてみた。
綺麗な満月だった。
空から目線を下に下ろすと家の前にある電柱の下に小さな箱が置いてあった。目を凝らし箱を見つめると、産まれたばかりぐらいであろう、子猫がか細く鳴いている。
とっさに、外に駆け出そうとベットを飛び出しドアノブに手を掛ける。
……私、外出れなかった。だってニートだもん。外恐いし…窓から見守る事にした。
カーテンを全快に開け、祈るように子猫を見つめる。
誰か拾え。誰か拾え。
願いは虚しく簡単に朝を迎えた。
昼間なら…そう思ったけど人々は冷たい。見向きすらしない。
時間はあっと言う間に夕方になり、学校帰りの学生で溢れていた。
えー可哀相。拾いなよ。マジ無理なんだけど、お前が拾えよー。
笑い声交じりに会話が部屋まで聞こえる。
と同時にドアの向こうにカタンと物音がする。晩御飯が置かれたようだ。人気がさったのを確認するとドアを開け机にトレイを乗せた。あの子猫は食べてるんだろうか?
卵焼きを頬張りながら、ちらっと外を見る。鳴き声がしない。
心配になりトレイに箸を置き、窓に駆け寄ると身を乗り出した。
どうやら動いていないらしい。
気が付くと部屋を飛び出し裸足のまま玄関を駆け出した。子猫に近付き箱を掴み部屋へと早足で戻った。
ドタドタ音を鳴らしながら階段を駆け上がり部屋に入るなり、子猫を抱き上げた。
辛うじてまだ温かい体温。箪笥から小さなタオルを取り出し子猫の身体に巻き付ける。手の平で軽く擦りながら、一階のリビングに行き、冷蔵庫からミルクを取り出し温めてから、子猫の口に運んでやる。父母は黙って私と手の中の子猫を見つめる。家族とも顔を合わせない様に子猫に視線を向けながら、飲め。と心の中で願う。少しづつスプーンからミルクを飲む子猫に自然と笑顔になった。
それが私とあの子の出会いだったんだよね