梅城ケンヤが例え表向きだけにしても、穏健派との和解を図って来る―\r
一見信じ難い予測だったが、九重モエはそれに十分な自信を持っていた。
『さっき奈良木会長が言ってたでしょう?【最初から侵略しますなんて教える侵略者なんていない】―恐らく梅城会長は何か大規模な構想に基づいて行動しているのでしょう』
構想自体はまだ分からない。
だが、そこに至るまでに彼が何を選択し何を選択しないかまでなら九重モエには分かる―\r
『内部を固め直し、我々の侵攻を招かないため、だから彼には時間が必要なのです―今日の会合の知らせはすぐ彼の耳に達するでしょう。恐らく近々彼の方からアプローチがある筈です』
『梅城会長と対談すると?』
霧島ユウタは眉をひそめた。
『危険です。それこそどんな罠を張って来るか分からない』
『今の彼にはそんな手を打てる余裕はありません』
だが、九重モエには不思議な程に恐れも不安もないみたいだった。
『そんな事をしない姿を内外に見せ付けなければ、対談自体意味がない―今の彼はそう考えてます』
『はあ…』
霧島ユウタは内心舌を巻いた。
中々どうして、我らの会長も大したものだ。
梅城ケンヤの向こうを張れるのは、やはりこの人しかいないみたいだ。
だが―\r
『ですが会長―もし梅城会長が我々に牙を剥いて来る時があるとしたら?』
霧島は聞かずにはいられなかった。
その質問に、九重モエはしばらく黙りこくってしまったが、やがて、
『闘います』
小さい声で、しかし断言した。
そして―\r
『出来れば―そんな事態があって欲しくはないのですが―』
確かにそれは、最悪の未来だった。