ヤス#165
「決まっているでしょう。私のお家。狭いけど、寮も二階は使えるし。とりあえずはうちに住んで下さい」
「良いのかしら…」
「当たり前です。その為に来たのですから…さあ、行きましょう」
「あなた…」
「そうだな…恭子ちゃん、甘えさせてもらうよ…香織、詩織を起こしてくれ」
「あ、良いですよ。僕が抱いて行きます」
「ハハ…重いですよ。小柄だけど、もう十七ですから…香織、起こして」
「大丈夫ですよ」
ヤスは詩織を軽々と抱え上げた。
まるで赤ん坊を抱き上げるかのようだった。流石に父親の良一は驚いた。笑顔を浮かべている。
「まあ!平井さんって、力持ちなのね」
母親の静子も笑顔で頷いた。思わぬ助け舟にホッとした様子だ。安堵の表情を湛えていた。
「ホント…詩織がまるで赤ちゃんみたいだわ…うらましいけど…」
「う…うん…ムニャ、ムニャ…」
「よほど疲れたんでしょうね…ビクともしないわよ。さ、行きましょう!荷物を持って、香織」
「うん!」
六人を乗せた定員オーバーのワゴン車は真夜中に料亭・香月にたどり着いた。