雪の華35

龍王  2007-10-06投稿
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 桃実はフラフラと冬の海に入って行く。

 さざ波が桃実にぶつかる。ダメだと言ってるかのように桃実を陸に押し戻そうとしている。

でも桃実は──


「……黒……峯……好き…よ……愛して…る」

 すでに下半身は海につかり、もう数歩で足がつかなくなる。


 後、数歩。桃実の足が止まった──


「──……ヤ……セイ……」

 フッと少し正気を取り戻したのか桃実は自分の手を見つめ、指に触れる。

「……夜……タス…ケ…聖夜」

 別れ、再会。

 暖かく優しい抱擁。懐かしい声。今も好きな心。

 再び触れあえ、声を姿を、何も変わってない。
 昔付き合っていた時と何も。桃実は心から黒峯を愛してた。


 そして言われた言葉『さよなら』

 また言われた残酷な言葉。
 身を引き裂かれ、黒峯を殺そうとする程、愛していた。

 後に残った傷跡。愛する者はイナイ。生きる……気なんかなかった──


 聖夜がいなかったら──




「タス…ケテ……聖夜」



 桃実が触れている自分の手には指輪が──






桃実は



その後海にのまれ


姿を消した──

 

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