先生…愛してる

 2007-10-06投稿
閲覧数[494] 良い投票[0] 悪い投票[0]

林檎は驚いた。
この河原は人通りが少ない。だから見られてたなんて全く気付かなかった。

それでも平静を装って言った。

「過呼吸じゃ死ねないんだから、ほっといてくれたらよかったのに。余計なお世話よ!」

男は厳しい顔をして言った。

「こんな真夜中に、こんな人通りの少ない場所で気絶なんてしてみろ。襲われたって誰も助けてなんてくれないんだぞ!もっとよく考えろ。」

何も言えなかった。
事実この男を押し退けることが出来なかったのだから…。

私は浅はかだったとうつむいた。

男はそれを見て苦笑いをした。

「つらい事があったんだろ?だから過呼吸なんて起きたんだろ?
それなのに何にも知らないでキツく言って悪かった。」

男は優しく言いながら、林檎の頭をソッとなぜた。

林檎は優しくなぜてくれた男の手にホッとした。

『この人は私を心配してくれたんだ。』
そう思った瞬間…涙が頬を伝う。


初めてだったんだ人に優しくされたのも、心配してくれたのも…。

男は泣いてる林檎に困りながらも、頭をなぜ続けた。


なぜてくれるのが嬉しくて、気恥ずかしくて、泣きながら笑って男を見た。


男は一瞬ドキッとした。

「何笑ってるんだよ」と照れ笑いを浮かべた。

林檎は男の笑った顔に見とれそうになった。

林檎の頬を伝う涙を、男はもう片方の手でぬぐってやった。

林檎は男の手から伝わる温もりから、生まれて初めて心が満たされた気持ちになった。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 唯 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ