仄かに香る夕焼け3

薔薇  2007-10-06投稿
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何も見えてこない。自分自身の何かが音を立てて腐れていくのがわかる。
『ごめん、ちょっと用事あるから、帰るね。』
『ええ、久しぶりに会ったのに。しょうがない。また近いうち飲みにでも行こうね。』

わたしは独り、歩いた。

捜し物をしているかのように、込み上げたものを堪えるように、『わたしは挫折者だ』と一歩一歩踏みしめながら、ひたすら歩き続けた。

いつしか南にあった太陽が西に見え、見上げた空は華麗な朱に染まっていた。
堪えていたものがさらに熱くなり、再び、空が揺れた。

自分の存在、意義、過去、現在、未来。悔しくて、悔しくて悔しくて。

わたしは走った。もう止まらない。止まりたくない。生きていればきっとこの孤独から抜け出せる術がある筈だ。きっとある筈だ。切り立った崖沿いの先に見える夕日を浴びながら、横を前から後ろへと過ぎ去るトラックに逆らいながら走った。
『きっと…』
きっと、という漠然とした期待。深呼吸をして決心した。わたしは右の空に向かって高くジャンプした。



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