気がつくと、ポストには見慣れない古い鍵が入っていた。
僕は最近心底笑っていない。と言うか笑おうともしない。こんな年にもなってまだプータロー。夜にはバイト先のレンタルビデオで働き、昼間は引きこもり。もちろん彼女なんていない。
毎週金曜日には白血病の母が入院している病院へ足を運ぶ。余命は一年だと聞いてから、もう2ヶ月がたった。女手一つで育った俺には、身内はこの母だけだったが余命を聞かされてもいまいちピンとこなくて涙すら出なかった。
そしてある日のバイトで、不可解な出来事が起きた。いつものように返却ボックスを整理していると、ビデオの他に小さな箱が入っていた。箱の裏側には私宛に「アナタガコマッタトキニ」と書いてあった。
「気持ち悪っ。困ったときなんてねーよ。」
店長に相談すると僕宛だから持って帰れと言われ仕方なく持ち帰った訳だ。