『そんな…何故この様な汚れた翼の者が政府の特別機関に…!!』
白翼人の男は龍華と身分証を目を点とさせながら交互に見ていた。
よほど龍華が国家公務員であり国の特殊機関である軍部庁特別討伐執行部鎮圧課…
通称執行部の者だと信じられないらしい。
『やっぱり…
予想通りのリアクションだな。』
慌てふためる白翼人の男を見て龍華は溜め息を付いた。
こういう事は日常茶飯事だ。
人間・白翼主義国家である東日本において黒翼人の社会的地位は最下層に属する。
そして黒翼人の様な漆黒の翼を持つ龍華も同様だった。
翼の形から判断して龍華は白翼人に属している(稀に白以外の翼を持った白翼人が生まれる事もある、白翼人か黒翼人かを生物学的に分類する基準はあくまで翼の形であって色では無い。)が同じ様に迫害を受けてきた。
一度外に出れば向けられるのは疑惑と偏見、そして憎悪のまなざし。
冷たく、対等の立場として見ない痛々しい視線。
そして悪魔として恐れられる。
なのでこの白翼人が動揺する事も龍華の予想通りだった。
「どうかいたしましたか?
私の部下が何か失礼な事でもいたしましたか?」
二人の間に不穏な空気が漂っていると、先程の武将髭の男と金髪碧眼の白翼人…エルファがテレポートして現れた。
二人はこの状況を見て事の真相を直ぐに理解した。
「エルファ…お前があの中年のオヤジに丁寧にご説明してやれ。
俺は龍華の事情聴取をする。」
「…わかりました。あのメタボオヤジにご丁寧に説明します。」
二人が他の者には聞き取れない位小声でそう言うとエルファは愛想の良い営業スマイルで中年『メタボオヤジ』の白翼人に説明を始め、そして武将髭の男は堅い表情で龍華の腕を掴んだ。